『紋章が語るヨーロッパ史』〜ブックレビュー〜 [中世ヨーロッパ・騎士物語]
この本は非常に興味深く、勉強になった一冊です。
中世のヨーロッパにおいて紋章が果たした役割から始まって、それを受け継ぐかたちで生まれてきた旗、さらには共同体意識や差別化のシンボルとしての標章の役割まで、多様な角度から紋章やシンボルに言及している本でした。
紋章が生まれてくるのは、中世、ちょうど騎士が顔の全面を覆うヘルメットを着けるようになったときに、個人を識別するために騎士の持つ楯に紋様を描いたのが始まりだそうです。それはやがて代々受け継がれ家系の伝統を示したり、王侯・貴族の権威を象徴するものとなっていきました。
yokuさんから以前質問された「双頭の鷲」についても解説がありました。双頭の鷲の起源はやはり中東にあるようですが、神聖ローマ帝国の紋章になったのは皇帝ジギスムントの時代(1433年)だそうです。
これはかなり専門的になりますが、14世紀になると「紋章学」という学問がヨーロッパに現れ、紋章の色や図形の細かい規則を設けていたそうです。模様や動植物の絵なども多数引用されているので見ているだけでも面白いかもしれません。
さらに筆者は差別化のシンボルとして、被差別身分の縞模様の衣服やユダヤ人のしるしなどを挙げ、シンボルを通して王侯・貴族を頂点とするタテ社会が視覚的に示されていたことを明らかにし、都市の紋章や職人のしるしなどを通して中世社会のヨコのつながりを明らかにしていて、面白い主張だなと思いました。
その他にも馬上槍試合や宮廷歌人に関する記述もあったのでとてもためになる一冊でした。
紋章といえば、これまで二回ほど目にしました。
トレドとツールーズの駅で。
力の象徴といったようなところでしょうか。
そういえば、プロ野球のチームの旗に似ているような
気もします。時代が変わっても人間が考えることは
変わりませんね(笑)。この本はそういった意味で
道案内になりそうですね。
by yoku (2007-02-14 06:51)
yokuさん、コメント&niceありがとうございます。
紋章はまさに力、権力の象徴と言えますね。
旗が紋章に取って代わるきっかけとなったのがフランス革命の時に生まれたフランスの三色旗だそうです。
by イソップ (2007-02-15 17:58)
あきえもんさん、niceありがとうございます。
by イソップ (2009-06-20 18:53)