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【パリ4日目ーサクレクール寺院で聖なる学び】ドイツ・フランス旅行2008 [旅行記]

 旅行最終日。これは失敗談なのですが、私にとってターニングポイントとなりうる出来事なので、恥をしのんで記事にしたいと思います。

sacre-coeur1.jpg

 最後の日はモンマルトルの丘にあるサクレクール寺院に行きました。あいにく空は雨模様でしたが、最終日を楽しもうと気を張って丘へ向かいました。丘の頂にそびえる寺院を目指して歩いていると、黒人のお兄さんたちに話しかけられます。彼らはミサンガ売りで、ボーッとしてると強引にミサンガを編んで手に結び、金をふっかけて来るんです。

 わかっていました。私はそれを知っていたんです。私たちより前にサクレクール寺院に行った仲間からも、結構強引に手をつかまれるからとにかく逃げなきゃダメだよと忠告されていたんです。しかし…
 一人の黒人さんが寄ってきたので、私はさっと横によけて何とかやり過ごしました。しかし、一緒に行っていた友人が捕まってしまったのです。先に行ってしまうこともできないので、上手くやり過ごせよ、と思いながらちょっと離れて成り行きを見守っていたのですが、いつの間にか私が、別の黒人さんに声をかけられていました。

 すぐに逃げなければいけないことはわかっていたんです。逃げても何をされるわけでもないし、追ってこないということもわかっていたんですが、相手の強い語気の前に立ちすくんでしまいました。

 結局、成り行きに身を任せた挙げ句、25ユーロ取られてミサンガを手に入れました。幸い旅行費用は余っていましたし、最終日だったので金銭的な痛手は少なかったのですが、外国でいわゆる怖い体験をしたことの動揺と、ここまで何のトラブルもなく来たのに最後にいやな思いをしてしまったという気持ちなどが残って、なにかモヤモヤした気持ちでサクレクール寺院まで登ることになりました。

 寺院の中は素晴らしかったのですが、どうにもモヤモヤがとれなくて、今ひとつ楽しめません。なんであそこで立ち止まってしまったんだろうとか、彼らはあれでクリスチャンなのかとか、どうしようもないことに考えをめぐらせていたのです。

 気付いたら私は、寺院の椅子に座って手を合わせ、彼らのために祈っていました。あの黒人さんたちのためにです。

 この旅行を通して、パリの美しさや壮大さを大いに満喫してきましたが、同時にジプシーや物乞いも多く見かけました。いくら都市として立派でも、いくら栄えていても、あの黒人さんたちのようにあこぎな商売をしなければ食べていけない人たちもいるんです。神の愛が本当に必要なのはそういった人たちなんじゃないかと、そのとき私は感じたんです。私はあの黒人さんたちが悪い人たちだとは思いませんでした。これは実際に私があの人たちに触れたから感じたことなのだと思うのですが、ミサンガを編んでいるときの英語のトークの感じは気のいいあんちゃんです。

 だからといって、彼らの商売を正当化しているわけではありませんし、私自身、カモになったことは反省しなければならないと思っています。もう二度と足を止めることはありません。

 ただ、私はそのとき初めて本心から、心の底から“祈った”のです。私はキリスト教徒ではありませんし、そのときもイエスに対して祈ったわけではないですが、なにか神聖な存在、“神的なもの”に対して、本気になって祈りを捧げた経験は、このときが初めてでした。それは直前の体験のインパクトも関係しているのかもしれませんが、誰かのために、それもほとんど全くの他人と言えるような人たちのために、これほど深く祈ることができるのかと、自分でも驚いたほどです。

 祈りを終えたら、だいぶ気持ちがすっきりして、堂内をしっかり見学することができました。ちなみにこの寺院の内部はこの旅で初めて撮影禁止だったので写真はありません。その後に登った塔からの景色は格別でした。パリで最も高い場所であるモンマルトルの丘のさらに上ですので、パリの街が一望できました。
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サクレクール寺院からエッフェル塔。

 今回の体験は、私が神聖なものを初めて感じたという意味で、私にとって大きな経験にはなりましたが、間違いなく、ただの失敗談でもあるので、どうか笑ってやってください。みなさんがサクレクール寺院にお越しの際は、黒人さんを見かけたら見向きもせずに駆け上がってくださいね。

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コメント 6

飛騨の忍者 ぼぼ影

奥行きのあるとってもいい写真です。
by 飛騨の忍者 ぼぼ影 (2008-04-02 14:40) 

アマカワ

物乞いの人に絡まれたよ。ミサンガはなかったですけど。
「英語話せるだろう??」と聞かれ、「無理。英語わからない」といっておきました。
パリにいると、普通なかなか見れない闇の部分も表に出てきてますよね。
祈りが通じると良いね!
by アマカワ (2008-04-02 22:33) 

yoku

私もすごい昔、ここでしっこい物売りの少年に
遇いました。今でもいるんですね。
フランスには多くの外国人がいます。アラブ系、アフリカ系、東欧系。
などなど。ある意味では、移民に寛容ということかもしれません。
現実を知る貴重な体験かもしれません。
なにしろ、大統領その人が、ハンガリー出身(父親)。
日本では考えられないことです。
by yoku (2008-04-03 00:16) 

イソップ

フェイリンさん、飛騨の忍者 ぼぼ影さん、アマカワさん、yokuさん、xml_xslさんniceありがとうございます。

飛騨の忍者 ぼぼ影さん> お褒めの言葉ありがとうございます。

アマカワさん> 人間が暮らす以上、闇の部分が出るのは避けられないことなのかもしれません。ただ、それも実際に行ってみなければ気づけないことですよね。

yokuさん> フランスは日本よりも移民の受け入れは進んでいるのでしょうが、移民が多いこと=移民へのサポートが十分、というわけではないのも事実ですね。今回の経験でそのことを実感しました。
by イソップ (2008-04-03 21:51) 

chousan-drybox

パリはけして美しいだけの街ではありません。メトロのエスカレータで財布を掏られそうになりましたし、日本人の若い女性を狙う若い男を何回も見ました。サクレ・クールは早朝に行きましたので何事もありませんでした。そういう体験をすると日本の治安が良いことを実感します。
美しいパリジェンヌが平気でなにか道路に捨てたり、幻滅することを目撃しました。それでもパリは愛すべき街には変わりありません。私は出来れば住んでみたいとも思います。かなわぬ夢ですが。
by chousan-drybox (2008-04-07 01:30) 

イソップ

chousan-dryboxさん、コメントありがとうございます。
確かに、外国を見ると日本の治安の良さは改めて実感されますね。それでも、パリに住みたいというのも、ちょっとわかります。
by イソップ (2008-04-08 18:44) 

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