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「締め切りのない土地へ」幸村誠シンポジウム@文化庁メディア芸術祭 [アート]

 楽しいひとときでした。文化庁メディア芸術祭でマンガ部門の大賞を受賞された『ヴィンランド・サガ』の幸村誠先生が、今日2/11、国立新美術館でシンポジウムを行いました。

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 幸村先生のお話を聴けるチャンスなんて、滅多にあるもんじゃない! と思い、幸村マンガファンの端くれとして、私もちゃっかり参加してきました。


 作品に似合わず(?)お茶目な方で、笑いも交えながらかなりフランクに話して下さいました。前から疑問に思っていたことや作品に込めた想いなども聞けたので、なかなか有意義なシンポジウムだったと思います。


 以下に書くことは、講演中の私のメモを元に編集していますので、質問と答えがそのままあったわけではありません。ネタバレになりそうなことは追記(下の方)に書きますが、まずは軽いジャブから。

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 プログラム中は写真撮影禁止。


週刊から月刊へ


ヴィンランド・サガ 1 (少年マガジンコミックス)

ヴィンランド・サガ 1 (少年マガジンコミックス)

  • 作者: 幸村 誠
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/07/15
  • メディア: コミック



ヴィンランド・サガ 1 (アフタヌーンKC)

ヴィンランド・サガ 1 (アフタヌーンKC)

  • 作者: 幸村 誠
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/08/23
  • メディア: コミック



 『ヴィンランド・サガ』は、当初、週刊少年マガジンに連載していたのですが、2巻分を書いたところで月刊アフタヌーンに移籍しています。その理由についておっしゃったことは、単純に「遅かったから」だそうです。2巻分書いて「とても書けない」と思って月刊に引っ越したそうです(笑)


 これは予想通りでしたね。月刊連載でさえ穴開けてるくらいですから…。この日も締め切りだったようで、関係者席では担当編集の方が目を光らせていました(笑)


テーマに暴力を

 自身2作目を描くにあたって、「テーマに暴力を入れる」ということを先に決めていたそうです。その具体的な理由についてはたぶん言っていなかったと思いますが、舞台を「暴力が日常である世界観」に設定し、それをフィクションではなく歴史の中に見つけたかったそうです。ヴァイキングにした決め手は、まず日本の歴史は多くの先人たちがやってしまっているから嫌だということ、そしてヴァイキングが新大陸を発見したという事実、だそうです。


 暴力がテーマとはおっしゃいましたが、ご自身は戦いは嫌いで、ヴァイキングは「基本的に野蛮だ」というスタンスを取っているそうです。


 ただ、だからこそ、そんな彼らが新大陸を発見したという事実が大きくて、幸村先生は「戦争を嫌ってへんぴな所へ行ったとしか思えない」と思ったそうです。


創作の原点

 お話の中で、創作に対する想いは何度か触れられていましたが、一番核になっていると私が思った言葉は「今をぜんぶ肯定することはできない」という言葉です。本人は「精神年齢が14歳のまま止まっているガキの考え」みたいなことを言っていましたが、そんなことはなくて、とても深い考えだと思いました。


 生きている間、戦いに明け暮れて、死んでもヴァルハラで戦いに明け暮れるというヴァイキングの死生観。幸村さんはそんな理想像を「そんなの嫌ですよねぇ」と一蹴しました。


「これはきっと血気盛んな男たちが作った理想で、じゃあ女性や子ども、戦えなくなった人たちはどう思っていたのか」

「この時代にも新しい平和像が欲しいと思った人が必ずいたと思う。」


 その時代に違和感を持っていた人、そうした存在がトールズであり、アシェラッドであったわけです。


以下、ネタバレあり


今後の展開は?

 と訊かれた幸村さんは、何の迷いもなく


 「アメリカ行きます!」


 と返答。しかも「みんな薄々わかってたんでしょ〜」なんてうそぶく場面も(笑) そりゃタイトルがタイトルだけにねぇ(笑)


アシェラッドの死


ヴィンランド・サガ 8 (アフタヌーンKC)

ヴィンランド・サガ 8 (アフタヌーンKC)

  • 作者: 幸村 誠
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/09/23
  • メディア: コミック



 「これはみんなから怒られました。なんで殺すんだって(笑)」そう語った幸村さんですが、アシェラッドの死は連載が始まって早い段階から決まっていたそうです。


 その理由は「トルフィンに仇は討たせない」と思っていたから。


 「トルフィンってあんなだから、仇討ちを果たしちゃったら、真っ当な人間に戻れないじゃん」とのお言葉。


 確かに…。


 それで、アシェラッドの死をひとつの到達点に設定して、そこへ至る道のりを模索して描いていったとおっしゃっていました。


 このお話を聴けたのはうれしかったですね。ファンとしては最も興味がある部分の裏話ですから。他にも作画に対する姿勢や「愛」についての考えなど、面白い話がたくさんありましたが、レポートぐらいの文量になってしまったのでこのへんで。


 作品の中にもある「ここではないどこか」を求める思いは幸村さんの中に常にあって、今は「締め切りのない土地」を求めているそうです(笑)


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