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「ミュシャ展」譚《スラブ叙事詩》は見なきゃ死ねない [アート]

 遅ればせながら、ミュシャ展に行ってきました! 会期ぎりぎり、滑り込みセーフです。実は2週間前に一度足を運んでいるのですが、10時20分に着いたときに70分待ちと出ていて、しかもチケット売場にも長蛇の列ができていたので、一旦見送ったという経緯があります。

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 悔しいのでローソンチケットでチケットを用意して、12連勤を終えた今日、朝イチで家を飛び出して開場前に到着しました。まあ、開場一時間前でも列はできていたんですが、なんか早めに開場したらしくて、10時頃には中に入ることができました。

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 目玉はもちろん《スラブ叙事詩》。会場に入った瞬間から大判の絵画が壁一面にドン!ドン!ドン!と掛けられていて、圧倒されました。一枚目でもう、5分ぐらい立ち尽くしてしまいました。すべての作品がドラマティックで、壮大にして荘厳。写実的かつ戯画的。あらゆる感情を揺さぶられる空間でした。


 まずはテーマ。戦や祭儀、象徴的な出来事の描写を通してスラブ民族の歴史を描くのが20点に及ぶ《スラブ叙事詩》の最大のテーマです。それは十分に描写していながら、その瞬間を切り取った場面の一コマに、同時に様々な場面を描き込んでいることに私は凄みを感じました。


 神話的なモチーフや英雄の姿が描かれる同じ画面に、死に絶えた戦士、悲嘆に暮れる人民、赤子を手にする母親、戦に関わるすべての人々の感情を描き出していました。そこには19世紀から20世紀を生きた画家ならではの感性があるような気がしました。


 その描き方を可能にしているのが描写力。一言でいえば空気遠近法なのでしょうが、ミュシャの作品は極端なまでに空気遠近法をデフォルメしているような雰囲気を感じました。最前面にいる人物を明るくはっきりと描き、奥に行くにつれて若干霞がかったように色を淡くしていく、一方で神話の登場人物は現実味を薄れさせるように暗めの色で、違う階層にいることを明示しているようでした。


 その技法がレイヤーを重ねて遠近感を表現するアニメーションに似ているなと思ってしまい、それはやはりミュシャが若い頃に主戦場にしていたポスターデザインの下地があったからなのかな、とそんな空想までしてしまいました。


 展示の構成としては、この《スラブ叙事詩》がスペースの大半を使って序盤にあって、これは章に含まれていないんですね。次の部屋が第一章で「ミュシャとアール・ヌーヴォー」となっていました。もう序章でお腹いっぱいだったんですが、それでもやはりポスターデザインはすごい。ミュシャは女優サラ・ベルナールの舞台ポスターを手がけたことで実績を積んだ画家です。代表的なリトグラフのポスターが20点ほど出展されていました。


 連作「四つの花」と「四芸術」を並べて見られたのは良かったです。どれも美しさと官能性を兼ね備えていました。「黄道十二宮」(Zodiac)も圧巻の美しさでした。これを見てミュシャは本当に現代のイラストレーションの父なんだと改めて思いました。


 滑り込みでも、混雑していても、この展示会、特に《スラブ叙事詩》を自分の目で見られたことは生涯の宝になります。一生、心に残る展示会でした。スラブの民にとって、この画家の存在は僥倖だと思います。興奮して図録を買ってしまったことは言うまでもありません。


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イソップ

middrinnさん、niceありがとうございます。
by イソップ (2017-06-04 07:23) 

middrinn

御丁寧に恐縮ですm(__)m
このミュシャ展は芸術新潮で読んで、
メチャ行きたくなったんですが、
図録をネットで購入してしまい、
結局行かずじまいでした^_^;
でも、この熱い玉稿を拝読して、
行かなかったことを後悔してます(..)

by middrinn (2017-06-04 16:08) 

イソップ

いやぁ、拙い文章で申し訳ない。
お褒め頂き、ありがとうございます。
でもパッションだけでも伝えられたらと思います。
by イソップ (2017-06-04 19:52) 

dezire 

こんにちは、
私もミュシャ展で『スラヴ叙事詩』を見てきましたので、大変共感を持って読ませていただきました。『スラヴ叙事詩』の魅力は、古くから民衆に親しまれてきた多くの伝説を、綿密な考証により写実的な歴史の場面と象徴的表現が同居するミュシャ独自の描き方で、現実に起こった史実として、スラヴの人々に体現させ、画面に描き群衆を等身大に描くことで、観る人を自分がその場にいるような演劇的体験をひきだし、視界いっぱいの画面からはみ出してきそううな描き方で観る人が時間を忘れるほど、その場面を体験できました。

私はミュシャがパリでポスター画家と成功してから、チェコのプラハに戻ってから、「スラヴ叙事詩」の制作に至るまでの、プラハの街に残したミシャの芸術作品を見ていくことにより、アール・ヌーヴォーの巨匠が「スラヴ叙事詩」に至るまでの軌跡を追ってみました、「スラヴ叙事詩。のブログと合わせて、画像だけでも結構ですので目を通してみてください。私のレポートについて、ご感想やご意見などコメントをいただけると感謝いたします。

by dezire  (2017-06-09 13:34) 

イソップ

desire様、コメントありがとうございます。
《スラブ叙事詩》は本当に絵の中に引き込まれるような魅力がありました。象徴の描き方もキリスト教的な宗教画とは一線を画する表現技法だと思います。
ブログは意見させて頂きますね。
by イソップ (2017-06-09 23:35) 

イソップ

ジルさん、niceありがとうございます。
by イソップ (2017-06-13 22:23) 

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