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「ハンバート家の旧正月2020」で溢れた思い [アート]

 先日、ハンバートハンバートのライブに行ってきた。「ハンバート家の旧正月2020」1日目。


 今までに見たのは、タワーレコードのレコ発ライブが2回ほど。お金を払って二人のライブを観たのはこの日が初めてだった。トークも含めて2時間フルで観た彼らのライブはとても良かった。歌い続けてきた二人の積み上げてきたものが見えて、最高だった。


 前半はFOLKのカバーも含めて、メッセージ性の強い曲が並んだ。はじめに感じたのは、佐藤良成の紡ぐ歌詞の不気味さと、その歌詞をポップに包み込む曲の美しさだ。何年間も聴いてきたはずなのに、目の前で聴くと詩の力に圧倒される。それらが佐野遊穂の声に乗った時、彼らの音楽は私の身体に優しく染みるように入って来た。



 佐藤良成の詩の世界は、誰もが共感をしながらも、素直に笑っては聴けないようなものが多い。だが彼らの音楽は、苦しみや物悲しさをたたえて、人生のままならなさを謳いながら、それを聴く私たちに下を向くことを許さない。自ら前を向いて歩くことを促すような音楽だ。ライブで培ってきた二人のハーモニーが、さらにそのメッセージの説得力を高めていた。


 後半は手拍子が入るテンション高めの曲が中心。この二人はこんなに観客を盛り立てるのか、遊穂さんはこんなパフォーマンスをするのか!と、驚いた。これは楽しい。私は手拍子をしながら体全体でリズムを刻んでいた。


 ああ、すごいな。こんな振れ幅のあるデュオだったんだ。こんなライブをやる夫婦だったんだ。ずっとファンでよかったな。この二人の中には幸せがある。それも、昏い現実を隠さず包み込んだ幸せが。


 この世界を創り上げた佐藤良成の凄みを、その天才性を改めて感じた。


 レコ発ライブだと、演目はそのときの新曲に偏りがちだが、この日は過去の色々なアルバムから曲を演っていた。昔の曲から最新の曲まで、幅広くやってくれて、それぞれに聴いていた時の思い出が蘇ってきた。ずっとライブをやり続けていたんだという歴史を感じて、また昔の曲を生演奏で聴くことができて嬉しかった。


 アンコールで「あたたかな手」が演奏された。彼らの曲の中では2017年のアルバムに収録されている新しい曲だ。この曲を待っていた。私は自分の中でこの曲を待っていた事に驚いていた。もの悲しい別れの歌詞、リズミカルな曲調、良成くんのギター、キャッチーなサビ、遊穂さんのハーモニカ、二人の優しいハーモニー、そして手拍子をする私たち観客、これがハンバートハンバートなんだ。素晴らしいステージだった。


 最後の曲は代表作「おなじ話」。二人が世の中に気付かれるきっかけになった曲だ。


 私は最近、ラジオばかり聴いていて、ハンバートハンバートの音源をあまり聴いていなかった。でも音楽の記憶は私の身体の中にあって、音を全身で浴びると、記憶が蘇るのを感じた。好きな音楽を摂取するのは人生にとって大事なことなんだと、改めて感じた夜だった。

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