有川浩『キケン』〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]
今回は有川浩さんの小説『キケン』のご紹介です。装丁も中のイラストも漫画っぽくて、いかにも遊んでます的な印象で、有川さんがよく言う「大人のライトノベル」の体現のような小説でした。
いつものラブコメ展開はほどほどで、今回はがっつり男の青春を描いた作品でした。女性視点の小説が多いだけに、男たちの感情をどう描くのか気にして読んだんですが、お見事でした。むしろ、この人こんな引き出しもあるのかよと面食らったと言うのが正直なところです。
いつものラブコメ展開はほどほどで、今回はがっつり男の青春を描いた作品でした。女性視点の小説が多いだけに、男たちの感情をどう描くのか気にして読んだんですが、お見事でした。むしろ、この人こんな引き出しもあるのかよと面食らったと言うのが正直なところです。
ビジョルド【五神教シリーズ】第3部『影の王国』〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]
お久しぶりです。小説の紹介です。ロイス・マクマスター・ビジョルドの【五神教シリーズ】第3部、『影の王国』を読みました。前の2作品とは毛並みが違う印象でした。
第1部『チャリオンの影』と第2部『影の棲む城』は時代的にも地理的にも近い地平の作品で、共通する登場人物も出てきたのですが、今回は全く別の地域の物語でした。訳者あとがきにもありましたが、今作は地図も具体的な説明もないようなので、五神教という共通点以外は全く別物といった感じです。
第1部『チャリオンの影』と第2部『影の棲む城』は時代的にも地理的にも近い地平の作品で、共通する登場人物も出てきたのですが、今回は全く別の地域の物語でした。訳者あとがきにもありましたが、今作は地図も具体的な説明もないようなので、五神教という共通点以外は全く別物といった感じです。
有川浩『植物図鑑』〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]
近藤史恵『エデン』〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]
久しぶり日本の紹介です。近藤史恵さんの『エデン』。自転車ロードレース競技を扱った作品で、前作の『サクリファイス』は第5回本屋大賞で2位になっていて、過去にこのブログでも記事を書きました。
今回の舞台はヨーロッパ最高峰のレース、ツール・ド・フランス。男たちが走る3000キロの道のりは様々な思いが交錯する険しい世界でした。
主人公は前作と同じ白石誓(ちかう)。彼はヨーロッパのプロチームに渡り、やはり【アシスト】としてエースの勝利に貢献する役割を担っています。エースのミッコはロードレース界でも1,2を争う実力の持ち主。主人公は彼を勝たせることにやり甲斐を感じていました。
今回の舞台はヨーロッパ最高峰のレース、ツール・ド・フランス。男たちが走る3000キロの道のりは様々な思いが交錯する険しい世界でした。
主人公は前作と同じ白石誓(ちかう)。彼はヨーロッパのプロチームに渡り、やはり【アシスト】としてエースの勝利に貢献する役割を担っています。エースのミッコはロードレース界でも1,2を争う実力の持ち主。主人公は彼を勝たせることにやり甲斐を感じていました。
伊坂幸太郎デビュー作『オーデュボンの祈り』完読〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]
最近、ドラクエ10にハマりすぎていろんなことが疎かになっているイソップです。長くブログを放置しておりました。ちなみにドラクエでも「イソップ」のニックネームでドワーフやってます。見かけたら声かけてください(笑)
さて、久しぶりに小説の紹介。伊坂幸太郎さんのデビュー作『オーデュボンの祈り』です。いまさらな感はありますが、伊坂を読み始めて、デビュー作を読んでいないというのもなんなので読んでみました。
印象は、「これがホントにデビュー作!?」という感じ。SFというのか、ファンタジーというのか、ある種の不条理さを含んでいながらミステリーが展開していく新感覚の物語でした。しかもそれが論理的に齟齬なくきれいに成立しているのが見事です。
さて、久しぶりに小説の紹介。伊坂幸太郎さんのデビュー作『オーデュボンの祈り』です。いまさらな感はありますが、伊坂を読み始めて、デビュー作を読んでいないというのもなんなので読んでみました。
印象は、「これがホントにデビュー作!?」という感じ。SFというのか、ファンタジーというのか、ある種の不条理さを含んでいながらミステリーが展開していく新感覚の物語でした。しかもそれが論理的に齟齬なくきれいに成立しているのが見事です。
伊坂幸太郎『チルドレン』を読了〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]
伊坂幸太郎さんの短編集『チルドレン』を読みました。作者曰く「短編集のフリをした長編小説」と言うだけあって、それぞれの短編が集まって一つの物語を作っている書き方です。軽快なストーリーで楽な気持ちで読めました。
この小説は五つの短編からなっていますが、すべてに共通して登場する人物と複数の物語に出てくる人物がいます。そのため、短編集と言われなければ、1話完結形式の長編として十分に成立していると思います。
すべての物語に登場するのが、陣内という男。行動が突飛で予想がつかず、言動が断定的で、いい加減な変わった男。彼は常に三人称で語られ、物語はすべて彼に近しい人間の一人称で語られます。ただ、この短編集の本当の主人公は陣内だと断言することもできません。最終的に問題を解決するのは、決まって語り手なのです。
この小説は五つの短編からなっていますが、すべてに共通して登場する人物と複数の物語に出てくる人物がいます。そのため、短編集と言われなければ、1話完結形式の長編として十分に成立していると思います。
すべての物語に登場するのが、陣内という男。行動が突飛で予想がつかず、言動が断定的で、いい加減な変わった男。彼は常に三人称で語られ、物語はすべて彼に近しい人間の一人称で語られます。ただ、この短編集の本当の主人公は陣内だと断言することもできません。最終的に問題を解決するのは、決まって語り手なのです。
メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』感想〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]
先日、メアリ・シェリーの小説『フランケンシュタイン』を読みました。数年前に買って、読まなければと思っていながら、なかなか手が伸びなかった本です。きっかけは太田光さんの小説『文明の子』の中で、この物語が登場したからです。読んでみると、意外と読みやすくて面白い小説でした。
カバーイラストはこれではなくて、東京創元社の文庫創刊50周年限定カバーのもの。
この小説は数々の映像や文学に影響を与えた、言わずと知れた名作なので私が紹介する必要もないでしょうから、ただ感想だけを綴ります。
私がこの物語で感情移入したのは、怪物の心理描写でした。フランケンシュタイン博士によって生み出された人造人間で、人間より身体が大きく、恐怖を与えるほどに醜い姿をしています。彼は命を与えられてすぐに博士から捨てられ、無知で無垢な赤子の魂のままで外の世界に晒されます。
カバーイラストはこれではなくて、東京創元社の文庫創刊50周年限定カバーのもの。
この小説は数々の映像や文学に影響を与えた、言わずと知れた名作なので私が紹介する必要もないでしょうから、ただ感想だけを綴ります。
私がこの物語で感情移入したのは、怪物の心理描写でした。フランケンシュタイン博士によって生み出された人造人間で、人間より身体が大きく、恐怖を与えるほどに醜い姿をしています。彼は命を与えられてすぐに博士から捨てられ、無知で無垢な赤子の魂のままで外の世界に晒されます。
太田光『文明の子』感想文〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]
爆笑問題太田光さんの2作目の小説『文明の子』をご紹介します。1作目の『マボロシの鳥』と似た作風ですが、構成とテーマの深さは格段にパワーアップしていると思います。
前作と同じように短編の集合体なのかな、と思いながら読み進めていると、ある話からそれぞれの物語が結びついていき、連作の長編になっていきます。テーマは壮大ですが、堅苦しい感じはなく、誰にでもわかりやすい文章で書かれているので気軽に読める作品だと思います。
深夜のラジオでこの本の感想文を募集していたので、一気に読んで書いたのですが、採用には至りませんでした。それでも、感想文にはすべて目を通すと太田さんが言ってくださったので、自分の伝えたいことが作者に伝えられるというだけでも嬉しいです。
ということで、採用もされなかったので、ここで感想文を公開します。いわゆる「読書感想文」っぽいものを目指して書いたので、ちょっと恥ずかしいんですが、私が一読して感じたことを(なるべくネタバレしないように)書いているので、レビューとして読んでいただければ幸いです。
前作と同じように短編の集合体なのかな、と思いながら読み進めていると、ある話からそれぞれの物語が結びついていき、連作の長編になっていきます。テーマは壮大ですが、堅苦しい感じはなく、誰にでもわかりやすい文章で書かれているので気軽に読める作品だと思います。
深夜のラジオでこの本の感想文を募集していたので、一気に読んで書いたのですが、採用には至りませんでした。それでも、感想文にはすべて目を通すと太田さんが言ってくださったので、自分の伝えたいことが作者に伝えられるというだけでも嬉しいです。
ということで、採用もされなかったので、ここで感想文を公開します。いわゆる「読書感想文」っぽいものを目指して書いたので、ちょっと恥ずかしいんですが、私が一読して感じたことを(なるべくネタバレしないように)書いているので、レビューとして読んでいただければ幸いです。
有川浩『県庁おもてなし課』〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]
久しぶりの更新で、久しぶりの本の紹介です。有川浩さんの小説『県庁おもてなし課』を読みました。これぞ街おこし小説、観光に携わる人やお役所に勤めている人は読んでみると勉強になると思います。
簡単にまとめると、新設された「おもてなし課」に配属された高知県職員が、観光振興を目標に奮闘するという物語です。ちなみに高知県庁に「おもてなし課」は実在するそうで、著者はそこで取材をしてこの作品を書き上げたんだそうです。
著者自身が高知県の出身で、子どもの頃に旅行をした経験などから、高知県の実際の観光スポットがいくつも登場し、細かく描かれます。あとがきと巻末鼎談を読むと、半分ぐらいは実話なんじゃないかと思ってしまいます。
簡単にまとめると、新設された「おもてなし課」に配属された高知県職員が、観光振興を目標に奮闘するという物語です。ちなみに高知県庁に「おもてなし課」は実在するそうで、著者はそこで取材をしてこの作品を書き上げたんだそうです。
著者自身が高知県の出身で、子どもの頃に旅行をした経験などから、高知県の実際の観光スポットがいくつも登場し、細かく描かれます。あとがきと巻末鼎談を読むと、半分ぐらいは実話なんじゃないかと思ってしまいます。
6冊完読!『別冊図書館戦争I・II』〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]
2回続けて『図書館戦争』の記事です。ようやく別冊を含めて6冊全巻を完読しました。長かったようで、もう終わってしまうのかと寂しい気持ちもあります。とても素敵な物語でした。
『別冊図書館戦争』はIとIIの2本立て。『ー革命』後の世界の登場人物たちが描かれます。政治的な難しい話はなくて、ほとんど恋愛小説一直線という感じです。作者公認「ベタ甘」です。
ただ、その中でも「図書館」という枠の中での制度的問題点やサービス上の問題点をストーリーの中に盛り込んでいるので、考えさせられるポイントもあります。
よく考えると、前の4部作を読んでいない人には全部ネタバレになってしまいますね。ということで、以下はネタバレが含まれていますので、未読の方はご注意ください。
別冊図書館戦争 1―図書館戦争シリーズ(5) (角川文庫 あ)
- 作者: 有川 浩
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2011/07/23
- メディア: 文庫
『別冊図書館戦争』はIとIIの2本立て。『ー革命』後の世界の登場人物たちが描かれます。政治的な難しい話はなくて、ほとんど恋愛小説一直線という感じです。作者公認「ベタ甘」です。
ただ、その中でも「図書館」という枠の中での制度的問題点やサービス上の問題点をストーリーの中に盛り込んでいるので、考えさせられるポイントもあります。
よく考えると、前の4部作を読んでいない人には全部ネタバレになってしまいますね。ということで、以下はネタバレが含まれていますので、未読の方はご注意ください。