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米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]

 現実世界で探偵に遭遇したら、やっぱりイラッとくるのかなぁ…。


 米澤穂信の小説『春期限定いちごタルト事件』を紹介します。一般に「小市民」シリーズと呼ばれる作品群の第1作で、作者お得意の高校生が遭遇する日常のミステリーが描かれています。


春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2004/12/18
  • メディア: 文庫



 主人公は高校生の一組の男女。二人は恋愛関係にはなく、「小市民」を目指すために互いに協力し合う互恵関係。少年の方は「小市民」になるために自分の推理グセを封印しているのですが、彼の元に次々と事件が舞い込み、必死の抵抗もむなしく謎の解明に駆り出されていきます…。


 実際に出会ったことがないからわかりませんが、推理ショーとかって見せられるとちょっと引いちゃったりするんですかね。作中、主人公の少年は謎を解く流れになると何かにつけて嫌な顔をし、自分が推理しなくて済むようにと抵抗します。その理由は、過去に何度も自分が探偵のまねごとをして痛い目を見ているからだとか。


 これは米澤作品に共通するスタンスのようで、主人公は基本的に推理することを嫌がります。まるで探偵なんて、そんなに英雄的な職業じゃないよ、と言っているかのように。


 これはなかなか、ミステリー小説に対する大きな問題提起のようにも思えます。主人公は事件解決に邁進し、ついに謎は解かれ、犯人は暴かれる…、世の中は平穏を取り戻し、主人公は平和な日常へと戻っていく…。


 主人公が探偵や刑事ならそれでいいのかもしれません。事件が起これば解決するのが彼らの仕事なんですから。でも、高校生はそうじゃありません。彼らには学校生活があって、何かの事件で主人公が誰かを糾弾しても、その一件が片付けば、その人との人間関係は続いていくのです。逮捕してさようならでもないし、転校していなくなるわけでもないんです。


 そう思うと、ダン・ブラウンの小説に出てくるロバート・ラングドンも似たようなスタンスで謎解きに参加していますね。職業警察でなければ、人間関係に支障をきたすようなトラブルをわざわざ呼び込んだって良いことないというのが、多くの人の本音なのでしょう。


 そうした高校生の等身大の葛藤が上手く描かれているところも、この作品の魅力だと思います。起こる事件も身の丈に合っていて、死人も出ません(笑)


 スラスラ読めるのをいいことに、ちょっと米澤さんにハマリ気味のイソップがご紹介しました。


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