「魔術師マーリン」のみどころは? [中世ヨーロッパ・騎士物語]
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http://news.so-net.ne.jp/article/detail/98277/
まず言いたいのは「脚本のうまさ」。1シリーズ12回ですが、おそらく長いスパンでの放映を考えているからか、一つ一つの物語が1話完結でしっかり描かれています。海外のドラマってあまり見ないので、12回シリーズでやる本格的なドラマの構成って新鮮なんですよね。
そしてけっこう地味です(笑) ファンタジーというと、多くのエキストラを使った合戦シーンや豪華なCGエフェクトをイメージしがちですが、今のところそんな大仰な場面は出てきていなくて、片田舎の城郭都市で王族と魔術師が小競り合いを演じているという印象です。あと
その分、セリフ回しが絶妙なんです。ちょっとした言い合いの時に吐く悪態やそれに対する切り返しが面白くて、思わず吹き出してしまう場面もあります。イギリス式のウィットに富んだ会話っていうヤツでしょうか、とくに老ガイアスの深〜い皮肉が大好きです。
そもそも、ファンタジーなのに魔法を使ったのがばれたら即処刑っていう設定がすごいですよね。悪い魔術師よりウーサー王の方が強敵になってますから(笑) でも、この設定がこのドラマを面白くしているのは間違いないでしょう。この制約をどうかいくぐるかが1話1話のキーポイントになってきます。
話題の海外ドラマ「魔術師マーリン」 [中世ヨーロッパ・騎士物語]
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http://news.so-net.ne.jp/article/detail/98277/
NHKBS2でやっているドラマ「魔術師マーリン」(原題は「The Adventures of Merlin」)。マーリンと言えば、「アーサー王物語」ファンにはおなじみの名前でしょう。このドラマはその「アーサー王」を土台にして作られているファンタジーで、国名や登場人物の名前にも「アーサー王」に出てくる名前が多く使われています。
ただ、「アーサー王物語」を知っている人に言わせれば、名前は使われているけど中身はまったく別物。良く言えば「大幅なアレンジ」ですが、悪く言えば「完全オリジナル」(笑)
言っておきますが、けなしているわけではありません。このドラマ、ファンタジーファンなら絶対にハマります。というのも、その「アレンジ」がきれいにまとまっていて、あまり大仰ではない、じっくり見せるファンタジーとして作られているからです。むしろオリジナルで出してもいいんじゃないかと思うくらい、完成度は高いと思います。
『騎士—その理想と現実』〜ブックレビュー〜 [中世ヨーロッパ・騎士物語]
本格的な専門書ですが、意外と面白く書かれているので読みやすいかもしれません。今回は自分の専門分野(と言ってしまうと畏れ多いんですが)の話で、興味を持ったところをメモする程度なので、ご覧になる方は面白くないかもしれません…。

ミュンヘンのおみやげ屋さんのディスプレイです。
この本は三章で構成されていて、核となるテーマは、中世ヨーロッパの騎士階級とはどういう人たちで、どんな思想を持っていたのか、また貴族と騎士ってどう違うのか、ということだと考えていいと思います。内容について少しだけ書いてみようと思います。
『フランス中世史夜話』〜ブックレビュー〜 [中世ヨーロッパ・騎士物語]
“中世史”というだけで飛びつくのもどうかと思ったのですが、中身も見て面白そうだったので読んでみました。
雑誌に連載していたものを編集し直して出されたようです。文章は半ば論文形式で、カタいエッセイという印象を受けました。短編の完結したエピソードが多数収録されていますが、たいてい中世の史料に依っているので教会関係の逸話が多かったです。というのも、中世の史料というのはあまり多くなくて、文章を残せたのが教会の聖職者や国王付きの歴史編纂者などに限られていたんです。
そのためこの本でもキリスト教神学だったり、異端の問題、修道院の発展などの話が中心になっていました。キリスト教で面白いのは、キリスト教以前の多神教時代から土着に根付いている物語も、教会が介入してくると全て悪魔に結びつけてしまう所だと思います。この本ではそういう物語の変遷が追えるものもあって、その点で楽しめました。
『シャルルマーニュ伝説 中世の騎士ロマンス』〜ブックレビュー〜 [中世ヨーロッパ・騎士物語]
あれこれ本屋を探しても、中世騎士物語の代表作『ロランの歌』がなかなか見つからず、困っていたところでこの本を見つけました。
『中世騎士物語』(岩波文庫)の著者でもあるトマス・ブルフィンチが書いた(編纂した)いわゆる「十二勇士」モノの集成です。まえがき等を読むと、この作品はルネサンス期のイタリアの詩人たちが伝承を元に生み出した物語や、その他のさまざまな資料を元にブルフィンチが年代順に並べ直し、書いていったもののようです。この中には『ロランの歌』と同じ題材が収録されていますが、それが『ロランの歌』と同じ作品なのかどうかは私にはわかりませんでした。
しかし、この一連の物語はかなり巧みに構成されていて、中世騎士物語にしては意外なほど複雑な展開をもっていました。一人ひとりの勇士の物語が互いに影響し合っていて、単独で完結する物語がないのです。ある冒険で勇士が囚われた城に、別のところで全く違う冒険をしていた勇士が、全く違う冒険のために攻めていき、結果的に囚われていた勇士が助けられるというような展開が多数ありました。
また、面白いと思ったのは、いわゆる“サラセン人”=ムスリム(イスラム教徒)との戦いが一つのテーマになっていて、戦いの場がヨーロッパだけではなくアジアやアフリカなどにすぐ移って行けてしまうところです。アラブの人々の描写やイスラームへの理解などは全く見られませんが、ヨーロッパとイスラムの騎士同士で意外とフランクに会話ができたり、簡単に“マホメット教”(イスラーム)からキリスト教への改宗が行われたりして、当時のヨーロッパ人がこんな風に他の地域を見ていたんだというのがかすかに感じられました。
ただ、シャルルマーニュ大帝の描かれ方がちょっと可哀想だという印象を持ちました。というのも、大帝は戦場に赴く場面がほとんどなくて、なんにもやらないただの親ばかのように描かれているんです。『アーサー王物語』における晩年のアーサー王にちょっと似ている気もしました。史実のシャルルマーニュ大帝はかなり活動的で、年がら年中、領地を巡回していたそうなんですが…。これについては著者自身が書いているように、この物語はシャルルマーニュ大帝その人の事績だけではなく、他の「シャルル」の名を持つ何人かの王の行為も混ぜ込まれて伝説になったんだろうということのようです。
私が今までに読んだ騎士物語とは少し違ったテイストの作品でした。
映画『円卓の騎士(1953)』〜レビュー〜 [中世ヨーロッパ・騎士物語]
あまりお目にかかれない“アーサー王伝説”モノが500円で手に入るとあっては、見逃すわけにはいきません。
最近、大きい本屋さんではよく見かける昔の“名作”映画をかなりの数出しているメーカーのシリーズだったのですが、500円というところに思わず乗せられてしまいました。
半世紀の前の作品なので全体的にチープに見えてしまうのは仕方ないですが、あの壮大な叙事詩をよく二時間に収めたなという気はしました。
もちろん設定はめちゃくちゃですし、ツッコミどころは大変多かったのですが、まず面白かったのは殺陣のシーン。序盤の乱戦シーンは剣をひたすら振り回して、結局体当たりで敵を倒すという斬新な演出。生死をかけた必死さは伝わりましたが、最高の騎士という印象は受けませんでした。
円卓の騎士というタイトルですが、メインはアーサー王とランスロットの友情と悲劇、ちょっとでも触れられているのはパーシヴァルの聖杯のエピソードだけで、私の好きなガウェインはちょい役でしか出てきませんでした。
所々で原作の要素は出てきますが、ラストも大きく変わっていますので、なんだかなあという作品でした。
『紋章が語るヨーロッパ史』〜ブックレビュー〜 [中世ヨーロッパ・騎士物語]
この本は非常に興味深く、勉強になった一冊です。
中世のヨーロッパにおいて紋章が果たした役割から始まって、それを受け継ぐかたちで生まれてきた旗、さらには共同体意識や差別化のシンボルとしての標章の役割まで、多様な角度から紋章やシンボルに言及している本でした。
紋章が生まれてくるのは、中世、ちょうど騎士が顔の全面を覆うヘルメットを着けるようになったときに、個人を識別するために騎士の持つ楯に紋様を描いたのが始まりだそうです。それはやがて代々受け継がれ家系の伝統を示したり、王侯・貴族の権威を象徴するものとなっていきました。
yokuさんから以前質問された「双頭の鷲」についても解説がありました。双頭の鷲の起源はやはり中東にあるようですが、神聖ローマ帝国の紋章になったのは皇帝ジギスムントの時代(1433年)だそうです。
これはかなり専門的になりますが、14世紀になると「紋章学」という学問がヨーロッパに現れ、紋章の色や図形の細かい規則を設けていたそうです。模様や動植物の絵なども多数引用されているので見ているだけでも面白いかもしれません。
さらに筆者は差別化のシンボルとして、被差別身分の縞模様の衣服やユダヤ人のしるしなどを挙げ、シンボルを通して王侯・貴族を頂点とするタテ社会が視覚的に示されていたことを明らかにし、都市の紋章や職人のしるしなどを通して中世社会のヨコのつながりを明らかにしていて、面白い主張だなと思いました。
その他にも馬上槍試合や宮廷歌人に関する記述もあったのでとてもためになる一冊でした。
『中世ヨーロッパの都市の生活』〜ブックレビュー〜 [中世ヨーロッパ・騎士物語]
今日紹介するのはこの一冊。
1250年のフランスの都市トロワという時点を中心に、そこに生きた人々の生活、商売、政治を紹介した本です。
作者はアメリカ人で、歴史学の研究者ではないらしいのですが、それだけに市民の生活や職人の仕事、様々な挿話など、事細かに描写されていて楽しんで読めました。時間を区切っているだけあって、政治的な流れよりも、その時に生きた人々の生活環境(出産、結婚から、葬儀まで)に焦点が当てられていました。
職人の中にも様々な職種があり、それらについて細かい解説がされていました。
当時の交易の中心地の一つであったトロワでは、シャンパーニュ大市が開かれ、開催時期は活気に満ちていたそうです。
中世の空気が少し、感じられた気がします。
中世への旅 騎士と城 〜ブックレビュー〜 [中世ヨーロッパ・騎士物語]
名著リクエスト復刊だけあって内容も濃く、翻訳もすばらしい本でした。
大学の夏休みの課題で、ヨーロッパの歴史関連の本を一冊読んでくるように、と言われていたのでそのためにと思って読んだのですが、予想以上の名著ぶりでした(笑)。
もともとは西ドイツのギムナージウム高学年生(日本流に言えば高校生ー訳者)用に作られたらしく、日本人の大学生にも細かすぎず、浅すぎない内容で読んでいて様々な発見がありました。
中世ヨーロッパ、とりわけ騎士道の黄金時代と筆者が言うシュタウフェン朝時代のドイツに主軸をしぼって話を展開。中でも騎士の装備や日々の鍛錬の細かい描写は私の興味をそそりました。また、貧しい騎士達は盗賊にも成り下がるという現実もちゃんと書かれていました。代表的な騎士文学のあらすじがいくつか書かれていたのも嬉しかったです。
文章全体が機知に富んでいて翻訳も無理がなく、所々に見られるユーモアも効果的でスラスラと読めました。翻訳物に付き物の読みにくさは全くなかったですね。
夏休みに出会った名著の感想でした。
さ〜、この記事を元にレポート書かなきゃ(笑)!
映画『ROCK YOU !』〜レビュー〜 [中世ヨーロッパ・騎士物語]
先日日テレの金曜ロードショーで放映された「ROCK YOU!」。実は以前ブログ友達のkimucoさんに勧めてもらい機会があれば見ようと思っていたんです。ホントに馬上槍試合が見事に再現されていて見ごたえありましたよ!そのぶん突っ込みどころもいろいろありましたが…(笑)。
この映画は中世ヨーロッパを舞台にした作品で、馬に乗り一対一で槍を構えて衝突する馬上槍試合を題材にしています。製作はアメリカで原題は「A KNIGHT TALE」のようです。たぶん、槍試合の時に観衆がなぜかクイーンの名曲「We will rock you」を歌っているから邦題が「ROCK YOU!」なのでしょう。