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小説『ロスト・シンボル』感想と妄想〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]

 読みました。ダン・ブラウンのラングドンシリーズ第三作『ロスト・シンボル』。過去の作品同様、スリリングでアカデミックでミステリアスな作品でした(笑)


ロスト・シンボル 上・下 2冊セット

ロスト・シンボル 上・下 2冊セット

  • 作者: ダン・ブラウン
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2010/03
  • メディア: 単行本



 今回の舞台はアメリカ、ワシントンDC。そしてロバート・ラングドンが解き明かす謎はフリーメイソンの古の神秘。最初はアメリカが舞台じゃ歴史としては、たかだか二百数十年ぐらいだからとちょっと期待はずれかと思ったんですが、そこはダン・ブラウン、上手く料理していました。


 物語はフリーメイソンの神秘を追っていく謎解きに向かっていくんですが、途中からSF色が濃くなっていく気がしました。このシリーズは毎回、科学と神秘の両面から物語を進めていって、それをひとつの所に落とし込む形になるんですが、今回の「科学」はにわかには信じがたい内容を持っています。キーワードは「純粋知性科学」。


 正直、どこまでが実証された科学なのかわからないんでヘタなことを書けないんですが、作者はここに書かれた「科学」と「神秘」の真理を実在のものとして信じているんじゃないかと思います。そしてこの本を読んだ私も、その考えに与しようと思います。これについては「追記」で詳しく書きますね。


 あと言及すべきは、今作もご多分に漏れず登場する「狂信者」というか「殺人鬼」というか、まあ「犯人」なんですけど、今回もなかなかアクが強いです。彼の生い立ちや経歴についても作中で明かされますが、私はあまり共感するところはありませんでした。それで、今まで以上に犯行が残忍で、グロテスクだと思いました。ご参考までに。


 以下、ネタバレ御免!


 これから『ロスト・シンボル』を読むつもりの方は、以下は読まない方がいいと思います。


 さて、今回の「科学」は「純粋知性科学」という分野。登場人物が言うには、人間の思考には質量があって、その思考は物理的に現実世界に影響を与えることができるんだそうです。つまりは物質を変化させたり、思考だけで病気を治癒させたりということが可能ということです。


 これは古くから多くの宗教や信仰媒体の中で一種の「奇跡」とされてきたことの「科学化」であると言えます。私がこの考えに与すると言ったのは、私自身が精神世界の存在を信じていて、この「科学」がそれを肯定しているからです。もっと単純に言えば、もしそうだったら面白いじゃんって思えるからです。


 作品のもう一つの要、フリーメイソンについてですが、これはアメリカ建国の父祖たちがこぞって入会していたといわれる秘密結社で、作中では宗教を越えてひとつの真理を目指して集まった団体と紹介されています。予備知識はまったく持ち合わせていなかったので、この本を読んで得た知識ですが、人間の神との一体化、内なる神性の顕在化はとても興味深く、私の今の考え方とも近いところがあります。


 彼らは世界の様々な宗教、キリスト教、イスラーム、仏教、ゾロアスター教などの教えに知識と理解を持っていて、とても広い視野に立って神と人間の関係をみています。ただ、やっぱりネイティブ・アメリカンに対する言及がひとつもなかったというのは残念です。もっともアメリカの歴史から考えて当然と言えば当然なんですが、最も神に近い存在と言われる彼らを自ら駆逐していったという歴史に気付いて、今、鮮烈な皮肉を感じました。


 作品を読んでいてちょっと気になったのは、この「科学」もそうですが、作品自体が全体的にふわっとしている感じがしたんです。「犯人」の計画も不確定要素が多くて、かなりの偶然に助けられていましたし、ラングドンの謎解きも必然かと言われるとそうでもない。それだけ「犯人」が自分の運命を信じ切っていたのかもしれませんが、それでも納得できないくらい危うい犯人だったなぁと思います。


 長々とネタバレ御免で書いてみましたが、「純粋知性科学」の信憑性も含めて、フリーメイソンともどもちょっと勉強してみようかと思っています。


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