上橋菜穂子『蒼路の旅人』〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]
〈守り人〉シリーズの第6弾、『蒼路の旅人』をご紹介します。文庫版で読み始めたんですが、もう6作目になるんですね。最終第7シリーズの目前で、世界は大きく広がります。
この物語は、シリーズを通しての主人公、新ヨゴ皇国の皇太子チャグムが時代の大きなうねりに巻き込まれ、国の命運を左右する決断を迫られるストーリーです。15歳の少年が殻を破って青年へと昇華していく成長物語と捉える見方もあります。
毎回読んでいて思うのが、ファンタジーなのに読みやすいということ。作者自身は児童文学のつもりで書いていないと強調していますが、文章は平易で難しい言葉が少ないという印象を受けます。
これはもしかしたら、私がほとんど翻訳物のファンタジーしか読んでいないからかもしれないんですが、とかく異世界ファンタジーでは独り善がりになりがちな独自の固有名詞なども、語感をうまく調えているような気がします。
ストーリーは、クライマックスに向けての過渡期という感じがしました。息を呑む格闘シーンやスリリングな逃走劇はあまりなく、どちらかというと静かな緊張感がずっと続いているという展開の仕方でした。それからシリーズの要のはずの異世界ナユグの話もほとんど脇に追いやられて、直接ストーリーに関わる部分では出てきません。
注目されるのは登場人物の心理描写ですが、これに関しては「独特の表現」というのが適切でしょうか。作者は段落ごとに文の主観となる人物が変わる書き方をしていて、読み取りが少し難しいです。その分複眼的な心理描写ができていると思うのですが、個人的にはもう少し、チャグムの視点からの掘り下げた描写が欲しかったような気がします。
ただ、すべての伏線が解かれるのは最後のシリーズ。ここは次巻に期待して、気長に待つとしましょうか。
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この物語は、シリーズを通しての主人公、新ヨゴ皇国の皇太子チャグムが時代の大きなうねりに巻き込まれ、国の命運を左右する決断を迫られるストーリーです。15歳の少年が殻を破って青年へと昇華していく成長物語と捉える見方もあります。
毎回読んでいて思うのが、ファンタジーなのに読みやすいということ。作者自身は児童文学のつもりで書いていないと強調していますが、文章は平易で難しい言葉が少ないという印象を受けます。
これはもしかしたら、私がほとんど翻訳物のファンタジーしか読んでいないからかもしれないんですが、とかく異世界ファンタジーでは独り善がりになりがちな独自の固有名詞なども、語感をうまく調えているような気がします。
ストーリーは、クライマックスに向けての過渡期という感じがしました。息を呑む格闘シーンやスリリングな逃走劇はあまりなく、どちらかというと静かな緊張感がずっと続いているという展開の仕方でした。それからシリーズの要のはずの異世界ナユグの話もほとんど脇に追いやられて、直接ストーリーに関わる部分では出てきません。
注目されるのは登場人物の心理描写ですが、これに関しては「独特の表現」というのが適切でしょうか。作者は段落ごとに文の主観となる人物が変わる書き方をしていて、読み取りが少し難しいです。その分複眼的な心理描写ができていると思うのですが、個人的にはもう少し、チャグムの視点からの掘り下げた描写が欲しかったような気がします。
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