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森を見に行こう! 「森と芸術」展レビュー [アート]

 久しぶりに美術展の話題です。東京都庭園美術館で催されている「森と芸術」展を鑑賞してきました。森にまつわる芸術作品を集めた面白い企画展でした。

blog-236 庭園美術館外観.jpg

 会場の庭園美術館は目黒駅から徒歩5分ぐらい。私は自宅から歩いて行きました。

blog-237 森と芸術展.jpg


 展示は全8章の構成。森の存在を人間がどう捉えてきたかを西洋の美術史から見ていくのが大枠の内容でした。人が森に何を感じてきたのか、あるいはこれらの作品を観て人がどう感じるのか、そこには様々な森のイメージがありました。

 第1章では「楽園としての森」として、主に創世記「アダムとエヴァ」を主題にした作品を並べ、帰るべき場所である森、懐かしい場所である森のイメージを集めていました。楽園であると同時に人間が悪魔にそそのかされて罪を犯した場所でもあるので、どこか不気味さも備えている印象がありました。


 第2章は「神話と伝説の森」。ギリシア神話の神々やケルトの妖精が棲む場所としての森。そこには自分たちと違う生き物が棲む世界、異界として森を見るイメージがあり、日常から離れた世界としての認識があるように感じました。


 第3章は「風景の中の森」で、17世紀、自然回帰の潮流のなかで描かれた美しい森が登場します。個人的にはこの時代の風景画は好みです。コローやピサロの描く森は不思議と穏やかな気持ちにしてくれます。


 第4章「アール・ヌーヴォーと象徴の森」は象徴的な図像として森を描いた作品群。エミール・ガレの花器や花文棚のデザインは見応えがあります。第5章は「庭園と『聖なる森』」。人間が自然を「庭園」として支配した例を挙げています。


 第6章が「メルヘンと絵本の森」。私は一番好きなテーマでした。童話の挿絵や絵本に描かれる森のコーナーです。こうして集めると、ヨーロッパの童話の多くで森が重要な役割を担っていたことがわかります。


 第7章は、現代に相応しい神秘を森に求めた「シュルレアリスムの森」。マックス・エルンストの作品が多かったです。このあたりを論評する能力がないので、たいへん寓意に満ちていたとだけ言っておきます(笑)


 最後の第8章は「日本列島の森」。ここでは岡本太郎の絵画1点と写真がいくつか展示されていました。岡本太郎さんの絵は迫力があります。良かったです。


 各章の紹介が長くなりました。この企画展を観て、森という空間、それは「自然」という言葉で置き換えられるかもしれませんが、森に対して人間が持っている印象・捉え方が様々にあるということがよくわかりました。それはそのまま「自然と文明」の在り方に対する人間の考え方の諸相と言えるかもしれません。


 「文明が自然を支配していくんだ」というベクトルと「文明は自然と共存していかなきゃ」というベクトル、あるいは「いやいや自然の凄さは文明の手には負えないよ」というベクトル。このそれぞれのベクトルが各時代、各地域で衝突し合って、これらの芸術作品が生まれてきたのではないでしょうか。


 そんなことを考えました。


 会期は7月3日(日)までです。興味の湧いた方は、是非行ってみてください。あなたの知らない森がそこにあるかもしれません。


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イソップ

thisisajinさん、niceありがとうございます。

by イソップ (2011-06-26 13:39) 

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