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有川浩『県庁おもてなし課』〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]

 久しぶりの更新で、久しぶりの本の紹介です。有川浩さんの小説『県庁おもてなし課』を読みました。これぞ街おこし小説、観光に携わる人やお役所に勤めている人は読んでみると勉強になると思います。


県庁おもてなし課

県庁おもてなし課

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/03/29
  • メディア: 単行本



 簡単にまとめると、新設された「おもてなし課」に配属された高知県職員が、観光振興を目標に奮闘するという物語です。ちなみに高知県庁に「おもてなし課」は実在するそうで、著者はそこで取材をしてこの作品を書き上げたんだそうです。


 著者自身が高知県の出身で、子どもの頃に旅行をした経験などから、高知県の実際の観光スポットがいくつも登場し、細かく描かれます。あとがきと巻末鼎談を読むと、半分ぐらいは実話なんじゃないかと思ってしまいます。



▽おもてなし課の一員である掛水史貴は、遅い、不親切、失礼とお役所の感覚に染まった職員。彼はおもてなし課のプロジェクトとして、県出身の著名人に県施設の無料クーポンが付いた特使名刺を配ってもらう「観光特使制度」をスタートさせます。▽しかし、掛水は特使を依頼した吉門喬介という小説家から、特使制度の不手際について再三ダメ出しを受けます。掛水や他の職員は、吉門のダメ出しにもピンと来ず、いくつも失態を繰り返します。▽再三の助言を生かせなかったおもてなし課と掛水が、再度吉門に助言を請うと、二十年前に県立動物園にパンダを誘致する構想、「パンダ誘致論」を唱えた人物を捜せという指示が飛びます。▽掛水たちが捜し出したのは民宿を営む清遠という男。彼がとんでもないアイディアマンで、県庁は彼を招くことになり、彼を通しておもてなし課の意識が次第に変わっていきます。



 序盤で描かれるのは県庁の「民間感覚」との乖離です。観光特使の依頼をしてから名刺ができあがるまでの遅さやその間の連絡不足、さらには名刺に付いたクーポンのお役所的な重大な欠点など、お役所あるあるをこれでもかと言うほど描きます。


 私は民間に勤めていますが、振り返ってみると自分もお役所的な部分が多いなぁ、と耳が痛いところがいくつかありました。


 具体的な観光政策の話になると、とにかく手厳しく描かれるのが、高知県の観光地としてのプロデュース力のなさです。高知県には広い土地と海、山、川を網羅した豊かな自然があるのに、その魅力に気付いていない、生かし切れていないというところから始まって、交通網の未発達や箱物に頼った観光行政の甘さが指摘されます。


 著者はこの小説で本気で高知県の観光をプロデュースするつもりなのかと思うほど、具体的な地名や改善策がどんどん提示されていきます。小説という形をとっていますが、観光プロデュースのノウハウを漠然と捉えるには非常にわかりやすいと思います。


 同時に登場人物たちの家族や恋愛の物語も進行していきます。吉門と清遠の関係、清遠と県庁との因縁など、様々なものが交錯します。マクロな観光プロデュースの物語とミクロな人間ドラマを上手く描き分けているのが、素晴らしい構想力だと思います。


 そして有川浩といえば恋愛。相変わらずベタベタな展開で攻めてきます。これについては語る必要はないでしょう。楽しんでください(笑)


 このところ本を読む暇もなかったのですが、私の生活に、とても楽しいエンターテインメントを提供してくれました。そして、一度高知県に足を運んでみたくなりました。興味のある方は是非ご一読ください。



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