進化する槍【ビル】〜槍のいろいろ2〜 [中世ヨーロッパ・騎士物語]
前回はスピアーとランスについてお話ししました。今回は特定の用途を与えられて穂先の形状が変化した「進化した槍【ビル】」を紹介します。
13世紀頃には武器として姿を見せ始めたビルは、農具として使われていた「ビルホック」という鎌に起源があるといわれます。刺突するための鋭い先端と、相手を引っかけるための鈎爪から成ります。
☆新紀元社『武器屋』より15世紀頃の一般的な形の「ビル」
この武器は、前回紹介したランス【騎槍】を携えた騎兵隊に対抗できる歩兵用の武器で、突進してくる相手を鈎爪の部分で引っかけ、馬から引きずりおろすのが主な用途です。もちろん騎兵以外との闘いでも使われましたが、騎士全盛時代を通じて使われ続け、銃器が発達する16世紀半ばまで歩兵の主力となりました。
機能が単純で扱いやすかったため、あまり訓練が整っていない軍隊(農村など)でも用いられていたビルですが、時代が下るとともに様々な用途が加えられ、しだいに複雑な技術を要求されるようになりました。
正面の敵を突き刺すスパイク、引っかけるフルーク、振り回して突き刺す側面に突き出たビーン、相手を切断するための斧状の刃アックスブレイド、敵の攻撃を受け止めるラング。
☆新紀元社『武器甲冑図鑑』より
こういう武器を使った人はいったいどんな訓練を受け、闘ったのでしょう。これだけ使い道があれば熟達者の戦闘はさながら舞を踊っているようだったのではないでしょうか。
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