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小劇団の群像劇に感涙。有川浩『シアター!2』〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]

 小劇団にスポットを当てた有川浩さんの小説『シアター!2』を読みました。前作に続き、胸を衝く物語でした。確かシリーズ1作目の『シアター!』についての感想はかきそびれていたと思います。なので、1作目の感想も併せて書いていきましょう。


シアター!〈2〉 (メディアワークス文庫)

シアター!〈2〉 (メディアワークス文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2011/01/25
  • メディア: 文庫



 公演を打てば千人を超える集客のある小劇団「シアターフラッグ」。それでも演劇の世界は厳しく、採算は合わずに積もった赤字は300万円。劇団主宰の春川巧は、兄の司に泣きついてお金を貸してくれるよう頼みます。司はお金を貸すことを承諾したものの、代わりに厳しい条件を出しました。それは、2年間で300万円返せなかったらこの劇団を解散しろ、というもの。商業的に売れない劇団員たちのオトナの青春群像劇の幕が開きます…。




シアター! (メディアワークス文庫)

シアター! (メディアワークス文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2009/12/16
  • メディア: 文庫




 私は両親が趣味で演劇をやっているので、演劇については少しだけかじっている程度ですが、小劇団を中心として見た演劇界の現実はまったく知りませんでした。作者もまったく無知の状態から取材をして3ヶ月弱で1作目を書き上げたというのだから驚きです。


 公演は年に3,4回。稽古で報酬が出るわけでもなく、舞台に上がっても収入は雀の涙。普段はアルバイトや派遣で食いつなぐ。それでも芝居を続けている役者の人たちって、すごいなって改めて思いました。どれだけ表現に熱い気持ちを持っているんだろうって、それだけで尊敬してしまいます。


 そして、そんな感性だけで動いているような役者たちを動かすこの物語の作者はまたすごい。今作は特に、1作目で脇にいた登場人物に光を当てて、それぞれの役者の表情がよりはっきりしてきました。さらにお得意の恋愛エピソードがちりばめられて、次回作への期待がますます高まります。


 1作目の『シアター!』は約1年前、卒業旅行のために成田へ向かう京急の車内と、ヨーロッパへの行きの飛行機の中で読みました。一気に読んでしまったので、帰りの飛行機で暇をしたのを憶えています。全然泣ける話じゃないのに、私は序盤からずっと目に涙を浮かべながら読んでいました。今作も中盤から登場人物の台詞の一言ひとことに感極まり、不思議と目に涙が溜まっていました。


 理由はよくわかりませんが、この作品に私は強く感情移入してしまいます。両親は趣味で演劇をやっていますが、私自身お芝居は授業でやる程度。いわゆる「演劇の世界」に直接関わったことはありません。でも、貧乏でも言い訳せずに芝居をやっているこの世界の人たちに、憧れを抱いている自分がいるんです。この作品を読むと、そんな生き方が羨ましいと思ってしまう自分に気付くんです。


 それは無い物ねだりなのかもしれません。でも、表現の世界で評価されたいという思いは自分の中にありますし、まだ小説家の夢をあきらめちゃいけないとも思っています。まずは、小説を一本書き上げること。その目標に改めて檄を飛ばしてくれた、『シアター!2』は私にとってそんな作品です。



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