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米澤穂信のファンタジー! 『折れた竜骨』〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]

 ミステリーの申し子、米澤穂信さんがファンタジーに挑んだ作品『折れた竜骨』についてご紹介します。東京創元社の《ミステリ・フロンティア》レーベル7周年を記念して書き下ろされた剣と魔法と謎解きの長編です。


折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2010/11/27
  • メディア: 単行本



 この本を知ったきっかけはこのブログ。友人からのコメントで勧められたので購入しました。普段は文庫版しか買わない私ですが、「米澤穂信」と「ファンタジー」というキーワードで飛びつきました(笑)


 ファンタジーと言っても、舞台は12世紀のヨーロッパ。北海に浮かぶソロン諸島での殺人事件が題材です。そしてやっぱり本質はミステリーです。もっとも、米澤穂信が東京創元社から出版しておいて、ミステリーじゃないわけがないんですけれども(笑)


 ソロン諸島の領主の娘アミーナは、放浪の騎士ファルクとその従士である少年ニコラに出会います。騎士はアミーナの父ローレントに魔術によって人を殺す暗殺騎士が御身の命を狙っていると告げます。暗殺騎士は魔術によって他人を操り、確実に獲物を仕留めると言います。奇しくもそのときローレントは、ソロンの宿敵・呪われたデーン人たちの来襲に備え、傭兵を集めていました…。



 正直に言って私は、度肝を抜かれました。日本人が中世のヨーロッパを題材にして、こんなに精細で胸躍る推理小説を書けるのか、と。


 歴史的、文化的な差異をもれなく解説して、それを無理なく自然に文章に載せているのはお見事。そこにファンタジーとしての魔術的な要素もふんだんに盛り込んで、矛盾のない世界観をまとめ上げているんです。それらがみんな推理に関わるわけだから、その描写は殊更に綿密です。


 私の心には悔しいという思いも生まれました。巻末に挙げられた参考文献を見ても、この作品を書くためにたくさんの資料を読んでらっしゃる事がわかります。中世西洋史で卒論を書いて、西洋史学専攻を出た私が、読んでいない本がいくつもありました。もっと勉強しておくんだったと、改めて恥じ入りました。


 「米澤穂信は好きだけど、ファンタジーはちょっと…」と思う方、心配はいりません。ミステリーとして存分に楽しめます。


 「ファンタジーは好きだけど、ミステリーはちょっと…」と思う方、はあまりいないかな。ファンタジーでもミステリーの要素を含んでいるものはたくさんありますからね。創元推理文庫のファンタジー部門を読んでいる方にはむしろ軽すぎると思われるかもしれません。でも、ファンタジー色はかなり強いので、お楽しみ頂けると思います。


 夏休みのおともに、ぜひ手に取ってみてください。


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イソップ

やまさん、いつもniceありがとうございます。

by イソップ (2011-08-11 22:05) 

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