帽子のはなし

　ちょいとエッセイのまねごとなどを一席。


　帽子のはなし


　昨年の夏に帽子を買った。かねてから日差しの強い日が続いていて、帽子がないと外ではいられないと思っていた。だからその日も、半分は帽子目当てで家を出た。


　どうせなら明るい色の帽子を買おうと思った。高校時代まで母親から買い与えられた通販のＴシャツで満足していた私だ。ファッションには疎い。だけどその一方で、多少派手なものを身に付けたいという衝動もあった。



　その日も店頭に帽子が出ている店を何軒か回り、1時間ぐらいは悩んだと思う。帽子と一口に言ってもいろんな種類があるんだなぁと感心した。帽子の種類を初めて知るから、あれこれと目移りしてしまう。


　ファッションに疎い分、失敗したくないという気持ちが強い。そうして悩みに悩んだ挙げ句、結局耐えられなくなって【買わない】という悪循環が今までのパターンだ。それだけはやめようと思っていた。


　ようやく選んだのは、オレンジとグリーンのチェック柄の帽子だった。ちょっと派手かなと思ったが、店主らしきおじさんの「その色ならオールシーズンいけますよ」という言葉に乗せられて購入を決めた。

　その日から、この帽子を被って街を歩くと、今までと違うことが起きるようになった。なんの気なしに洋服を選んでいるだけで、それまでよりも気さくに店員さんが話しかけてくるのだ。この帽子を見ると店員さんは、私をオシャレな人と勘違いしてしまうらしい。


　店員さんは私が何と言わなくても、あれこれと服を出してきて、「これとこれを合わせれば、そちらの帽子にも合うと思いますよ」なんて言ってくる。あっという間にコーディネート完成だ。こうなるとこちらもその提案に乗せられてしまう。もとい、「乗せられてやるか」という気になるのだ。


　帽子のことを話題にする店員さんもいる。一度などは「その帽子ならオールシーズン被れそうですね」と言ってきた店員さんもいた。さすが、帽子屋の店主が言うことに間違いはない。


　この帽子のおかげで、ちょっと高い服にも手が出せるようになった。自分はオシャレ帽子を被っているんだぞ、と言い聞かせることで明るい服を選ぶ勇気が出てきた。自分の着たい服の色や柄、種類なども定まってきたような気がする。


　ちょっと大げさに言えば、この帽子との出会いは私を変えた。私のファッションに対する目を開かせてくれたのだ。ほんの少しのことだけど、その違いが大きく人を変えることがある。私はそう感じた。


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タグ：帽子 エッセイ

コメント 2

オシャレな帽子ですね～

かねてより俺、帽子は似合わないと連呼されてるので取り入れてないんですけども。イソップさんは帽子も含めトータルでオシャレできそうだな。

今度お会いするときはぜひ、かぶってきてくださいｂ
by アマカワ (2012-03-26 01:09) 

アマカワさん、ご無沙汰しています。

いまだに本当のオシャレさんにはなれませんが、少しずつ学んでいます。

お会いしたいですね。ぜひ。
by イソップ (2012-03-27 21:17)