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伊坂幸太郎デビュー作『オーデュボンの祈り』完読〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]

 最近、ドラクエ10にハマりすぎていろんなことが疎かになっているイソップです。長くブログを放置しておりました。ちなみにドラクエでも「イソップ」のニックネームでドワーフやってます。見かけたら声かけてください(笑)


 さて、久しぶりに小説の紹介。伊坂幸太郎さんのデビュー作『オーデュボンの祈り』です。いまさらな感はありますが、伊坂を読み始めて、デビュー作を読んでいないというのもなんなので読んでみました。


オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/11
  • メディア: 文庫



 印象は、「これがホントにデビュー作!?」という感じ。SFというのか、ファンタジーというのか、ある種の不条理さを含んでいながらミステリーが展開していく新感覚の物語でした。しかもそれが論理的に齟齬なくきれいに成立しているのが見事です。


 舞台は仙台の先の牡鹿半島を南に行ったところにあるという架空の島「荻島」。荻島は150年以上も外界との交流がなく、誰にも知られていない土地。そこに迷い込んだ主人公が様々な出来事に遭遇していきます。


 この小説のファンタジー要素を一身に背負うのがしゃべるカカシ。未来を見通せ、外の世界のこともなんでも知っている不思議なカカシで、島の人間の精神的な拠り所になっています。そのカカシがある朝、何者かによってバラバラにされ、頭の部分を持ち去られる事件が起こります。


 物語の焦点は、カカシはなぜ自分が死ぬ未来を誰にも告げなかったのか、あるいは予知できなかったのかという問題に絞られていきます。そしてそこには、荻島に関する重大な秘密が隠されていたのです。


 ざっとあらすじを書いてみました。そもそもカカシがしゃべるわけがないっていう話ですが、そこは小説のすばらしいところ。外から来た主人公にとっては不思議なことでも、島にいる人間にしてみれば、カカシがしゃべるのは当たり前のことなんですね。


 そのカカシは150年も前からそこにいて、ずっとしゃべり続けているわけです。むしろカカシがしゃべらない方がおかしい(笑) 主人公も自分のうんちくを駆使して、なんとか自分を納得させようと試みて、結局はすんなり納得してしまいます。


 他にも荻島ルールのようなものが沢山あって、唯一殺人を許された男がいたり、必ず毎日同じ時間に同じ所にいる嘘つきの画家がいたり、唯一外界と島を行き来できる男がいたりします。書いてみると不自然に見えますが、読者が納得させられてしまうのは、作者が設定した「隔絶された島」で150年に渡って作られてきた「文化の違い」が、ところどころで巧みに強調されているからだと思います。


 そしてこれらのルールは、すべて謎を解くための伏線になるわけです。現実とは違うある一つの箱庭を作って、物語に必要なルールを設定し、そこにリアリティを足していく。単純なようですが、これはひとつの小説のお手本のような気がします。


 伊坂幸太郎はデビュー作からこんなにハジけていて、こんなに面白い物語を作っていたのかと、改めて驚嘆した一冊でした。


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