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麦の会 第92回公演『こんにゃくの花』お手伝い [アート]

 11月9・10日と、今年も麦の会の公演がありました。第92回公演の演目はふたくちつよし作「こんにゃくの花」でした。事前告知がありませんで、申し訳ございませんでした。今回私は10日のお手伝いのみの参加でした。

blog-277 麦の会こんにゃくの花.jpg


 舞台は昭和39年の東京。家を守る妻を中心にした家族の物語。ある日、嫁いだ長女が実家に帰ってくるところから物語が始まり、単身赴任中の夫、放蕩旦那を抱える群馬のおばさんと、家族が次々と家に押し寄せます。


 麦の会の演じる芝居の多くがそうですが、今回もテーマは家族。大学生の長男も、二十歳で勤めに出ている次女も、浪人生で居候中の甥っ子も、みんなそれぞれに悩みや問題を抱えながら生きています。


 この物語の家族は、一人ひとりの問題にいちいち首を突っ込んで、自分のことのように捉えて意見を言います。お互いに不満を言い合い、罵り合っているように見えながらも、それがコミュニケーションになっているようです。そこにあるのは相手のことを思っての会話です。家族というまとまりが、日常の会話から生まれてくるというのを感じました。

 さらに強く感じたのは、単身赴任で4年間も家を空けている父親の存在感です。二十歳を過ぎた娘二人が、父親が帰ってくると聞いて喜びの声を上げ、母親もどこか浮かれている。帰ってきた父も飄々としていて、サラッと家族の現状に馴染んでいく。それがこの時代の父親像なのか、それともこの家族が特別なのかは私にはわからないのですが、とてもいい家族だと思いました。


 個人的に消化できなかったのは、この物語の時代観です。麦の会は演じる側も観客も50代から先がほとんどなので、昭和39年と聞けばオリンピックを連想し、その時代が思い出されると思います。時代の空気、懐かしさ、思い出がよみがえり、特別な言葉を必要としなくても、物語にすんなり入っていけるんだと思います。


 だからこそ作者は多くを書いていませんし、むしろ書いたら野暮になるのかもしれません。その時代の“今”を描くのに、時代背景の説明は不要です。それだけに、この物語は今の10代20代が見ても、分からない部分が多すぎるような気がしました。作者の意図するところの半分も伝わっていないんじゃないかと、私自身は感じています。


 それはもはや、昭和が歴史に片足を突っ込んでいることの表れだと思います。歴史として綴られるには近すぎて、思い出として語られるには遠すぎる。私たちの世代にとって、昭和は今、それぐらいの距離感にあるのだと思います。(ここで想定している昭和は「高度経済成長期」前後と考えてください。)


 私は、この時代に生きた人たちを羨ましく思いました。昭和ブームと呼ばれる流行があって、ドラマや舞台で描かれる昭和は、実感を持って懐かしむことができる“あの頃”です。そこには時代の熱を帯びた青春があります。


 私たちの世代には、20年後、40年後に同じように懐かしむことができる現在があるのでしょうか。ちょっと古臭いことを言って「昭和だねぇ」と揶揄されるときの暖かみが私は好きです。そんな時代を私たちは作ることができるのでしょうか。


 同じじゃなくてもいい、昭和とは違うかたちで“あの頃”と懐かしめる現在を、歩んでいきたいと思いました。


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タグ:麦の会 演劇
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コメント 2

chousan-drybox

お疲れ様でした。
by chousan-drybox (2012-11-11 14:50) 

イソップ

chousan-dryboxさん、ありがとうございます。

お疲れさまでした。

by イソップ (2012-11-11 18:59) 

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